2-10-1 Yurakucho,
Chiyoda-ku, Tokyo
Tokyo Traffic Hall
Building 6F
いろんな勢力がうごめいている。
それを楽しんで見ています。
5月某日、都内のアフリカ料理店にて伊藤氏へのインタビューを行った。転職をして半年、ユヒーロの社長を辞して1ヶ月後の今、彼の口からどのような言葉が紡がれるのか。伊藤氏の現在の心境と、外から見たユヒーロという会社について、大いに語ってもらった。
新しい会社ではいかがですか?
当初の計画どおり、着々と会社の改革を進めています。
- 1年目 破壊して作る
- 2年目 プラットフォーム化
- 3年目 自分の後継者を育てる
なるほど。新しい場所でも「捨てる」活動をされているんですね。ユヒーロ時代と違い、ビシッとスーツを着た伊藤さんは「バリバリのビジネスマン」という印象です。お仕事は順調ですか?
仕事が楽しくて仕方ないです。もう、動いていないと落ち着かない。この前、ゴールデンウィークが10日間あったでしょ。もう、何もしない日々を過ごしていくと枯れていく気がしてしまって。早く休みを終えて仕事を再開したくて仕方なかったですね。
休み中に仕事を進めることはできなかったんですか?
僕の役割は周りを動かすことなんで、一人でできることは少ないんですね。妄想はできるけど、形にできない。休んでいる間は、どう動かそうかなって妄想だけが膨らんでいくんです。もう、妄想疲れしちゃって自分がしおれちゃう感じ。だから、休み明けの初日はものすごいハイになりました。自分の妄想が現実になって、うわーって動く感覚。周りが動くことで、止まっていた時間が動き始めるんです。もう、楽しくてハイになりすぎて、夜中の3時まで眠れなかった笑。変化していることに快感を覚えるんです。
今、ユヒーロに対してどんなお気持ちなのですか?
ユヒーロは、僕が転職して距離をおくことで、「戦略的放置」をしている状態だと思っています。ユヒーロの中のいろんな勢力がうごめいている。それを楽しんで見ています。
第三者的な視点になったのでしょうか?
そうですね。ユヒーロにいる時は、僕にとっての世界はユヒーロしかなかった。だから、いろんなことが気になってしまっていた。気にはなるんだけど、人間には認知限界というものがあって、当たり前だけど、全てを把握してコントロールすることはできなかった。僕はユヒーロに対して認知限界以上に過剰に反応している状態だった。
転職して得られた成果は「意識の分散」。今はユヒーロのことを、フラットな気持ちで、俯瞰して見られるようになっています。それは、継続してそこに存在していたという、ある種の安心感から生まれてきていると思います。創業して以来、ずっとユヒーロと共にあったので、全てを把握せずとも外れ値だけを気にしていればいい。ユヒーロという環境の中で、みんながどんな風に動くか、ある程度の予測が立つので、注意力を過剰に持たなくて済む状態になっています。箱庭の中で動いているのを落ち着いて見られるような感覚です。
新しい会社ではどんな立ち位置?
ここでも、安定して「敵」と認定されています!みんなにとって僕は、自分たちが守りたいものを壊していく敵ではあるんだけど、彼らが抱えているモヤモヤをうまく言語化してあげることで、彼ら自身が前に進むことを促しています。その人自身の特性を、僕がオリジナルな言語で表現してあげると、彼ら自身が物事を受け止めやすくなる。そんな物語を紡ぐ能力が高まったと思います。
伊藤さんはクリエイターなんですね。普通は挑戦しない一番「キワ」を狙っているクリエイター。
そうかもしれない。「キワ」にこそ可能性があると思っています。僕のクリエイティビティは、全て妄想が起点になっている。今、僕はすごく必死で動いています。でも、必死になれるのはクリエイティブな営みが楽しいから。
今の仕事について熱く語ってくれた伊藤氏は、インタビュー中も携帯電話で部下と連絡を取り合い、早々に仕事に戻って行った。ユヒーロを去った彼は、新天地で今日も忙しくしているようだ。
- インタビュアー:関雅之、阿嘉彩、田中あやか
- 文:田中あやか
- 編集・校正:熊木雄亮
- イラスト:佐直舞
編集後記
再会した瞬間、あれ?と思った。伊藤氏の魔法が解けかかっている。
ユヒーロメンバー全員にかけたはずの絵本の魔力が薄れて、他の人みたいだ。
というか、「人」みたいだ!
でも、待てよ。自分自身はどうだろう。前からこんな姿だっただろうか?
ユヒーロに入った当初は、もっと「普通の人」の形をしていたのではないか?
そうか。。魔法をかけたつもりでいたが、自分自身がかかっていたんだ。