あるところに、「ユヒーロ」という会社がありました。
ユヒーロには、いろんなものが「無い」のです。
本当は、たくさん持っていたのです。
それはそれは長い時間をかけて、
いろんなものを集めていたのです。
でもある時、大切なことを見つけるために、
大切じゃないものを捨てることにしました。
「これからは、いろんなものを捨てるよ。」
社長はそういいました。
名刺、肩書き、自分の席…どんどんと捨てていきます。
「そんなことをしたら、仕事にならないよ」
「明日から、誰に決めてもらえばいいんだい?」
みんなは、おどろいてしまいました。
「なんとかなるよ」
社長はそう言って、本当に捨ててしまいました。
「次は、僕たちを縛るものを捨てよう。」
社長はそう言って、時間やルール…
目に見えないものをどんどんと捨てていきました。
「そんなことをしたら、仕事にならないよ」
「明日から、どうやって過ごせばいいんだい?」
「なんとかなるよ」
社長はそう言って、本当に捨ててしまいました。
「よし、次は僕たちの居場所を捨てよう。」
そう言って、社長はオフィスを捨てようとしました。
「そんなことをしたら、仕事ができないよ」
「いったい、明日からどこに行けばいいんだい?」
けれども社長は
「なんとかなるよ」
と言って、また捨ててしまいました。
帰る場所も、いつも守っていたルールもなくなって、
みんなはとっても心細くなりました。
なんだか野良猫になった気分だ、と思いました。
けれども、冬が来て、春が来て、
また夏が2回来るころには、
「意外とこういうのも悪くないもんだな」
そんな風に思うようになりました。
「なんにもない」にみんなが慣れてきたある日、
社長が言いました。
「こんどは僕自身を捨ててみようと思うんだ」
これにはみんなビックリです。
「そんなのは絶対だめだよ」
「そんなことをしたら、壊れてしまうよ」
みんなが反対をしました。
「なんとかなるよ」
社長はそう言って、本当に出ていってしまいました。
つづく